いかちゃんの物語

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夢の惑星

ある惑星に一機の宇宙船が不時着した。

不時着してしばらくすると、ボロボロになった宇宙船から、ふらりと1人の宇宙飛行士の男が現れた。

宇宙服を着て、片手には空気の測定器を持っている

「なんとか一命を取り留めた…どうやらこの惑星には酸素もあり、気温も我々人間が生きるのに適しているようだ…不幸中の幸いか。とにかく、宇宙服はいらないな」

男は宇宙服を脱ぎ捨てると、唖然とした表情でその地表を見つめた。

「なんだこれは…何もないじゃあないか。ただ一面の荒野。こんなところで生きていくのは不可能だ…食料は全部燃えてしまった」

男は絶望に明けくれ、しばらくの間呆然とその場に立ち尽くしていたが、このままでは何も始まらないと思い、立ち上がった

「よし、歩こう。歩けば、何か見つかるかもしれない。」

ジリジリと体を焼く太陽の光が、男の気力を削ぐ。

歩くたびに立つ砂埃だけが、男にとってこの地表で唯一目に見えて変化しているものだった。

 

しばらく荒野を歩いていると、遠くに人の大きさの数十倍ほどの高さの大きな岩が見えた。

その岩は閑散とした荒野の中でひときわ目立ち、何かのシンボルのようにも見えた。

「なんだあの岩は…ただの岩か?どちらにせよ、他に行き場もない、、、」

男はその岩を目指してただひたすら歩いた

岩の近くに着くと、岩の大きさのおかげで日陰ができていた。

日陰の下に立つと涼しくて心地よく、男は一息ついて、ぐったりと眠りそうになる。

ふと岩と地面の境目の部分に目をやると、そこに大人の手のひらくらいの大きさのキノコが三本生えているのが見えた。

「なんだ、このキノコは…」

見るからに怪しいそのキノコであったが、腹が減ってどうしようもない男にとっては最高の食料に見えた。

右手を伸ばし、そのうちの一本を手に取り、口へと運んだ。

キノコは水分を多分に含んでおり、噛むとたくさんの水分と同時になんとも言えぬ甘い味が口の中に広がった。

それは採れたての果実のように男の空腹と渇きを癒した。

「なんなんだこのキノコ…うまい。それに、食べると身体に力が漲るようだ。すごいぞ。このキノコを食べてゆけば、生きていけるかもしれない。よし、ここで少し休憩をしよう。」

そう言って男は大きな岩の横で、眠りにつく。

しばらくすると、男は目覚めた。今は何時だ!?

目覚め、周囲を見渡す。

だが、男はまだ自分が夢の中にいると錯覚した。

目の前の景色が荒野では無く、緑に覆われた庭園になっていたからだ。

「どういうことだ。これは一体…?」

庭園には沢山の木々が生えており、木々の隙間からは姿こそ見えないが鳥のさえずりが聞こえる。

近くには川が流れているのか、水音が聞こえる。

大きな岩があった場所には、岩の代わりにひときわ大きな巨木がそびえ立っている。

遠くにはひたすら草原が続いている。

「もしかして、これまで見ていた荒野は全て幻覚だったのか?最高じゃないか!ユートピアだ!ユートピアを見つけたぞ!」

男は1人でひたすら笑った。

緊張が緩んだのか、気づくと男は大便を漏らしていた。

大便が緑の大地にズボンの裾を通って落ちた。

男はそれすらも面白くて、ひたすら笑った。

ふぅと息をつくと、男の漏らした大便から、昨日食べたものと同じキノコがにょきにょきと生えてきた。

男は目を輝かせて、これこそが自給自足だ!と叫び、新しく生えてきたキノコを食べた。

それから、男は大自然の中で日々を過ごした。

キノコのおかげで食料には困らなかった。

しばらく大木の下で過ごしていたが、それにも飽き、ある日男は大木から離れてみようと思い立ち、歩き出した。

どんな世界がこの惑星に広がっているのだろうと、胸を高鳴らせながら。

大木から離れても緑は続き、花畑を見える。

こんな素晴らしい惑星に動物が存在しないのは何故だろうなどと男は思う。

だがよく考えれば、それは自分がこの惑星を独占しているということではないだろうか。

この素晴らしい惑星は自分のものだ!と男は鼻歌を歌いながら歩き続ける。



歩き続ける、、、、





「それにしても、、ここはどこだろう。」

歩き続け、気づくと鬱蒼とした森の中にいた男は、ここから戻れないのではないかと不安に思い、手足が震えた。

その瞬間自分の背後からささやくような声が聞こえる。

「大丈夫だよ、、、大丈夫だよ、、、」


その声に安心した男の手足の震えは止まり、

そうか、、、大丈夫なのか、、、。

それもそうだな。

ここには水もあるし、草木もある。

人間にとって必要なものは全てあるじゃあないか。

それに、今の声、友達もいる。大丈夫だ。

とホッとため息をつき

「とにかく疲れた。一旦眠ろう」
と眠りにつく、、、。






目が覚めると、男は絶望した。


目の前の景色が、全て荒野に戻っていたのだ。


男はその瞬間全てを悟った。

自分が見ていたのは岩の横で食べたキノコによって見せられていた幻覚でしかなかったのだと。

荒野の中で、草木の幻覚を見ながら生きていたに過ぎなかった。

花畑や鳥のさえずりも、全て幻だった。

自分の体をよく見ると、やせ衰え、体のいたるところからキノコが生え始めているのが見える。

全てを悟った男は微笑を浮かべまた、荒野をゆっくりと歩き出した。