バケツ

言葉を吐きます

船に乗る

船に乗る

 

船に乗る

行き先の知らない客船に乗る

甲板に出ると、冷たい海風と照りつける日差しを受けて輝く海が眼下に広がる

段々と港が遠くなって、もう元いた場所には戻れないような気がする

 

遠くに雲が見える

それは海という荒野に反り立つ山のようにも見えるし、昔映画で見た大きな怪獣みたいにも見える

静かな波の音とエンジン音、子供が甲板をかける音、遠くから聞こえる海鳥の声が合わさって頭の中で一つの音楽になる

 

掴んだ手すりは塗装が部分的に剥がれていて、その下の金属は錆びている

目を瞑って、バグパイプみたいにお腹を膨らまして息を吸って、まるで自分が潮風になったみたいにゆっくりと息を吐く

 

しばらくそうした後に目を開けると、遠くに島の影が見える

そいつはまるで故郷みたいな顔をして、ゆっくりと迫ってくる